イケメン先生の甘すぎる溺愛
なのに、なんで......?
「......っ、もう知らない!」
耐えきれなくなって、私は準備室を飛び出した。
後ろで、おいっ!と呼び止める声が聞こえたけれど、そんなの気にしてられない。
止まらない涙を必死に拭いながら、私は宛もなく廊下を走っていた。
視界が霞んで前がよく見えない。
角を曲がろうとしたら、ドンッと何かにぶつかった。
「杏奈ちゃん?ごめんね、大丈夫?」
目の前にいたのは、帰ろうとしていた樹だった。
幸い、そんなに勢いもなかったので、よろけただけで、転ばずに済んだ。
「ご、ごめーー」
「泣いてるの?何があった?」
なんでもないと、通り過ぎようとしたのに、パッと腕が掴まれて、振り切れない。
「こっち来て?」
止まろうとしてくれない涙を片手で拭いながら、私は引っ張られるままに着いて行った。
「ここなら、誰も来ないから」
そう言って、着いたところは体育館に行く途中にある通路だ。
たしかに、ここなら誰も来ない。