イケメン先生の甘すぎる溺愛
そして、私の返事を聞く前に手を引いてその場を離れた。
角を曲がって見えなくなる前に、私は振り返って樹に、ありがとう、ごめんねと伝えた。
ちゃんと返事をしたかったのに、適当になってしまって申し訳ない。
でも何も言わないよりは良いと思って言った。
見えなくなる前、樹はなんとも言えない表情で手を振ってくれた。
ーーいい人なのに、悪いことしちゃったなぁ......。
そんな私を構わず引っ張っている誠也。
向かっている先は英語準備室だろう。
「ちょっと!バレちゃうから!」
さっきまで泣いていたことより、校内で、教師と生徒が手を繋いでいる方がまずいと思って言ったのに、誠也は離そうとしてくれなかった。
「そんなことより、こっちの方が大事だから」
そんなことってーー、結構大事だと思うんだけど......。
歩くのが早いので、私は必然と小走りになりながらついて行く。
2人分の足音が廊下に響いていた。
英語準備室に入り、扉を閉めてから、やっと誠也が振り返った。
「ごめん」
いきなり頭を下げられる。