翼のない鳥
美鶴の思い
美鶴side
「でもさ、その“秘密”って、美鶴も知らねーようなもんなのか?」
難しそうな顔をして、流星くんが言う。
・・・いつも馬鹿っぽいことばっかりしてる彼だけに、難しい顔が破壊的に似合わないと場違いなことを思ってしまった。
「…………、」
心当たりが、ないわけじゃなかった。
『この家から出ていけ。』
『美鶴、行こう。』
『ここにお前たちの居場所なんてないんだ。』
『大丈夫。美鶴には僕がいるから。だから、泣かないで。』
昔の、話。
でもそれは、確かな事実で。
忘れたい、忘れなきゃとは思っても、“それ”は記憶に棲みついて、離れない。
絶対に人に知られてはいけない秘密。
確かに“あのこと”は人に知られてはいけない秘密。
みんなが欲している、秘密。
でも・・・
「……、」
それでも、口が動こうとしないのは。
『忘れるんだ、美鶴。思い出す必要なんてない。僕たちに親はいない。ただ、2人で生まれて、2人で生きてる。・・・全部忘れて、なかったことにしてしまえばいい。』
何よりも優しい響きをたっぷりと含んだ、大好きな声が、今も鮮明に胸の中に残っているから。