母校でデート
第六話  「意外な展開」



少しばかり裕子さんの傍らで、うとうとしてしまった。

キ~ン コ~ン カ~ン~~~

「あっ、下校チャイムが鳴ってる」

僕は寝惚け眼を擦りながら半起きしながらベンチの辺りを見回した。

「アレ?裕子さん、校舎がほら木造で無いよ」

「寝ぼけたの?ずっと前からもうコンクリートの建物だよ」

「だって朝来た時、昔のまんまだねって、裕子さんも頷いたじゃん」

「えっ?あなたはそう言ったみたいだったけど、アタシ頷いたぁ~?」

「ああ・あ・あ、ほら、校舎の裏も!ずっと田んぼが広がっていたのに、
 えっ何で、家とかいっぱい立ち並んでる、オカシイなあ?」

「寝ぼけてんでしょ、景色が朝と昼に入れ替わる訳が無いもん」

「う~ん・・・・・???」

「ねえ、下校チャイムも鳴ったし、そろそろ・・・」

「う、うん、い、いやだよお~!未だ帰りたくない!ねぇ~、もっと
 ずっと裕子さんと一緒に居たいよお~!」

「ダダをこねて、もう~、だって生徒たちがみんな出てくるよ」

「けど、けどさぁ~、もう少しだけ・・・」

「また来よう!ねっ、また母校でデートしよ!だから・・・ね!

また再び下校チャイムが鳴った。
キ~ン コ~ン カ~ン

玄関内の下駄箱の辺りがガヤガヤと騒がしくなってきた。
直ぐに生徒たちが数人、玄関からゾロゾロと出て来た。

「ねえほら、生徒たちが大勢出てくるってばぁ~、早く行こ!」

「う、うん、わ、分かった・・・」

やがて多勢の生徒たちが楽しそうにベラベラお喋りしながら、クルマの
前を通り過ぎて行った。

「アタシたちもあんな風にお喋りに夢中になりながら帰っていたよね」

「うん、思い出すね~、いいなあ、あの頃に戻りたいなあ~・・・」

その時、トントントン、トントントン!!

誰かが激しくノックしてるような音がして、ハッと目を見開いた。

用務員みたいな野暮ったいオジさんがクルマの窓越しにこっちを見ながら
何かを話してるみたいだったから窓を半分だけ開けた。

「すいませんが、ここは他の父兄さんの出入りにチョッと邪魔になるので、
あちらの方に移動してもらえませんか」

「へっ?あっ、すいません」止まったままのクルマのエンジンを始動して、
何か訳が解らない状態のまま、指示された場所に移動しようとした、その
矢先に今度は助手席側の窓ガラスを誰かが叩いた。

トントントン、トントントン!!


「えっ??」




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