君色に染って
ー約束ー

上村智葉16歳。天真爛漫で愛嬌があり、みんなから愛される女の子だ。女の子らしい小さな体と細い手足。クリっとした大きな目にサラサラの黒髪。彼女は小学校に入学してすぐ、父親の転勤で東京に引っ越してしまう。そのルックスと愛嬌の良さで原宿でスカウトされ、有名な事務所に所属し、トップモデルに16歳で抜擢され、今や沢山のモデルが集まるファッションショーや雑誌に引っ張りだこの売れっ子モデルだ。

《智葉》

カシャッ。カシャッ。

『Karenちゃん!ラスト1枚最高の笑顔で行こう!』そう言うと小太りのカメラマンが私にレンズを向けた。私はレンズの向こう側にいる君に向かって満面の笑みで笑う。ちなみにKarenというのはマネージャーさんが着けてくれた芸名である。
東京に来て間もない頃、街でスカウトしてくれたのがマネージャーだった。初めは右左も分からない私を1から育ててくれた恩師だ。16歳で引退することを条件に今日までアイドルを続けてきた。私は今日でアイドルを卒業する。普通の女の子に戻るのだ。そして
私には会わなければならない相手がいる。

「高杉大智」

私の初恋の相手。そして私の結婚相手。
彼は私が引っ越す直前、うつむいて泣いている私に約束してくれた。


「僕が智葉ちゃんを世界一幸せなお嫁さんにしてあげるね」と。

その言葉を私は忘れた日はなかった。

ー大智に会えるー

この日を夢見てきた。大人になった大智。
ずっと私が会いたかった大好きな人。



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