愛してるって気持ちだけじゃ届かない
ベットの軋む音と、甘く喘ぐ声、そして艶めかしい男の息遣いが部屋中に響いている。
「…ハッ…しおり」
「ぁ…あぁ…けい…もう…むり」
「むり?お仕置きだって言ったろ。セフレだなんて言ったんだからな…もう2度と、そう思えないように体に刻みつけてやる。お前が本音を言うまでやめねからな」
そういい、更に手加減なしに加速する行為、肌を撫でる手つきに喘がされ、忙しなく乱れる呼吸で、虚ろな目で慧を見つめた。
ぼやけた慧の顔がどんな表情をしているのかわからないけど、手を伸ばし彼の頬を撫でた。
すると、その手に頬擦りして、そのまま手首を掴んだ慧は、口元に持っていき手のひらにキスをした。
「…しおり…お前だけは…誰にもやれない」
手のひらの中で甘くかすれる声は、熱を持ったままの私の体を蕩けさせる。
「…ぁっ…慧、…愛してるの」
「クッ…」
ぶるっと身震いし、息を止めた慧。
「俺も…してる」
再開された行為の中、彼の声が聞き取れないまま、乱されていく。
愛してるって気持ちだけじゃ届かなかった思いを口に出したら、これまでの苦しかった時間がなんだったのだろうと思う。
もっと早くに伝えてたらと思うのは、後から幸せだと実感したからかもしれない。
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