愛してるって気持ちだけじゃ届かない

現在


慧の家は、街より少し上がった丘の上にあり、ここら辺では有名なレストランを経営していて、彼はそこで副シェフとして働いている。

だが、まだ、半人前らしくシェフのおじいさんの元で修行中らしい。

彼のお店の定休日は平日の月曜で、月に数回平日に休みを取れるらしいが、私の新たな職場は、暦通りなので、もっぱら会えるのは、月曜の夜か慧の仕事終わりの夜遅くしかない。

お互い実家暮らしなので、大体の待ち合わせは、コンフォルトか、直接ホテルの部屋。

慧が休みの日は、コンフォルトで待ち合わせ、先に来て飲んでいる彼の横で、仕事終わりの私が軽く夕食を食べてから、そのままホテルに直行のパターン。

それ以外は、先に仕事が終わる私が毎回利用するホテルの部屋を取り、彼にホテルの部屋番号を連絡して、彼が来るのを待つというパターン。

ほんとに、割り切ったように単純な行動パターンしかない。

お互いの黒子の位置や、お互いの弱い部分を知り尽くし、数えきれないぐらい肌を重ねてもこの行動パターンは変わらない。

セフレだから仕方ないと自分自身に言い聞かせているけど、せめて手を繋いで歩いたり、腕を組んで歩くぐらいしてもいいんじゃないかと思うが、自分から行動にうつせない。
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