愛してるって気持ちだけじゃ届かない
温かいお湯がお互いの肩にかかる中、慧はボディーソープを手に取り泡立てると、自らの体を素早く洗い、私にキスしながら、彼の手についた泡で私の体を洗い出すが、それは艶めかしい手つきで、彼の手に乱されていく。
焦ったい手つきが憎らしい。
私は、今すぐにも彼に抱かれたいというのに、願いを叶えてくれる気はないのだ。
いつも、そう。
セフレでしかないのに、恋人同士のように戯れて、慧は、私が甘やかに蕩けるまで抱いてはくれない。
私だけが果て、虚ろな意識の中で彼を求める。
「…ぁっ…けい…」
すがるように慧の首にしがみつき、彼の耳元で名前を呼んで懇願する。
もう、抱いて…と。
「クッ…毎回ながら、おまえは俺を獣にしたいのか⁈」
罵るように唸り、私をそのまま腰の高さまで抱き上げて一気に貫く。
そうなると慧は、野獣になる。
盛りのついた動物のように、ベットに辿り着くまでそのまま抱かれ、浴室での戯れなんて幻だったかのように、こちらの限界なんて関係ないとばかりに、容赦なく己の欲望のまま果て切るまで行為は続くのだ。
先に目覚めるのはいつも私。
愛しむように慧の腕の中に抱かれていると、その度に、嬉しさよりも悲しみで胸が苦しくなる。