愛してるって気持ちだけじゃ届かない
どうして、こんなふうに抱きしめて眠るのだろう?
セフレなのだから背を向けて寝ていてくれたら、勘違いしそうにならなくてすむのに…
勘違いさせる憎らしい男の寝ている頬を撫でた。
くすぐったいのか、身動ぎ、私の腕を閉じ込めて更に抱きしめてくる。
「…悪戯っ子め…もう少し寝させろ」
彼の顎がグリグリと私の頭を擦り、最後にチュッと頭部にキスして寝息をたてだした。
こんな甘い慧なんて、友達でいたら知らなかった。
彼と体を重ねて知る、普段見ることのない彼の側面を知る度に、あの人とも、こうして甘やかに過ごしてきたのだろうかと思うと胸が騒つく。
きっと、私だからじゃない…
緩んだ顔で寝ている彼のこんな表情を、彼が抱いた女全てが見ていたのだろうか?
あの人なら、これ以上に…慧は。
そう思うと、私以外、こんな慧を知る全ての女の記憶から、彼を消すことができないかと願ってしまう。
慧に抱かれ貪欲な私が出てくる度、
私と関係を続ける理由が知りたくなる度、
いつまで続けば彼は私を愛してくれるのだろうか?
彼の唇にキスを落とし、『愛してる』と、届かない思いを胸のうちに留めて、彼の腕の中で再び目を閉じた。