愛してるって気持ちだけじゃ届かない
甘やかな嫉妬
慧と友達以上恋人未満の関係になって、早3年近くになる。
彼の側にいられるなら、友達でもいいと思っていた頃から、セフレになり、お互いの身体を知り尽くしても、いつまで経っても恋には発展しない。
30歳を前にして『愛してる』と言えば壊れる関係に、潮時だろうかと心が揺れてしまうのは、きっと同窓会の案内を見たせいだろう。
「なぁ、同窓会に行くのか?」
「あっ、そういえば元彼から行くのかって連絡来てたけど、いつだっけ?」
「はっ⁈連絡取ってるのか?」
「まさか…最初、誰だか思い出せなかったわよ。一回返信したらちょくちょく連絡くるのよね」
「なんてくるんだよ」
「どうでもいい内容だから、無視してる」
「なら、ブロックだ。今すぐ」
なんだか不機嫌顔で、ブロックするまで一緒に画面を覗いていた。
「ねぇ、確か、先生たちも来るんだよね⁈」
「らしいな」
そこで、会話が途切れ、脳裏に過るのは例の彼女だった。
きっと、慧の脳裏にも彼女が過ぎっているのだろう。
いつもの店のカウンター席に座ってビールグラスを持ちながら、意味もなく琥珀色の液体をグラスの中で回している慧のその姿を視界に捉えてから、ちらっと横目で表情を伺った。