愛してるって気持ちだけじゃ届かない

「ねぇ、ホテルに行こうよ」

露骨すぎただろうかなんて一瞬思ったが、耳元に唇を寄せてきた慧がクスリと笑う。

「我慢が効かないのかよ」

揶揄う声の後、チュッと甘やかなキスを耳に残し、離れた慧の唇は、次には支払いの合図を口に出していた。

耳元に残る慧の息遣いにぞわりと痺れる甘さで疼いたまま、今までにない慧の行動にポカンと口を開けて、彼の動作を見つめていたら、いつの間にか腕が抜かれ手を繋いできていた。

どうしたのだろう?

手を繋ぐ行為なんて、ベッドの中だけだったのに…
立った慧を見上げても、彼の意図が読めない。

「行くぞ」

いつまでも立ち上がらない私に焦れた慧は、らしくなく強引に手を引き、店を出てホテルに向かって歩き出した。

そして、いつものホテルの空き部屋に入るなり、ベッドに直行。

「ちょ、…待って…やだ、シャワー」

慧は、自分の服を脱ぎながらキスを仕掛けてくる。

今までの逢瀬らしくない行動に、キスを避けながら待てをかけるも、欲望を孕んだ目をした慧は、らしくなく甘やかに笑っていた。

突然、ドキドキと心臓が速く鳴る。

何度も肌を重ねたが、初めて見せる表情に緊張しだす。

「あんなに露骨に誘われて待てるわけないだろ。ぐだぐだ言わず抱かれろ」
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