愛してるって気持ちだけじゃ届かない
恋人と呼ばせて
「ふふふ」
「あははは…けっさくだったな」
私達は、2人でいつものお店のカウンター席にいた。
「あの人の顔、見たか?まさか俺が振るなんて思ってもいなかったんだぜ」
吹っ切れたように、思い出してまた笑った慧。
慧に関係ないと言われた時の彼女は、慧がまだ自分に未練があると思っていたのだろう。
『なによ。後で後悔しても知らないわよ』
慧からの信じられない言葉にあ然とした後、悔しそうに捨てゼリフを吐き、鬼のような形相で人混みに消えていったのだ。
賑やかな会場の中、近くにいたいくつかのグループに目撃されていた事と、馴染めない空気に同窓会を抜け出した私達だった。
「…よかったの?」
「なにがだ?」
「あの人のこと」
「アァ…そうだな。今ならあの人とのこと話せるな」
聞きたくないけど、終わらせてしまえる話をぶり返したのは私だから、静かに聞くことにした。
「教育実習で来た当時のあの人は、眩しいくらい生き生きしてて、好きになった時には誰かのものだったけど諦めきれなかった。もう、口癖のように口説いても堕ちなくて意地になってたな。それがある日、男と喧嘩したと呼び出され、チャンスだと思い関係を持った。だけど、俺のものにはならなかった」