愛してるって気持ちだけじゃ届かない
そこに偶然、ホテル街を女性と歩いていた慧と遭遇し、視線が重なった。
その瞬間、思わず助けを求めてしまった。
『お願い、助けて』
声にならない声で、唇だけを動かして彼を見つめたが、視線を逸らされ彼は通り過ぎて行ってしまい、絶望で、どうでもよくなった。
思考力がなくなり、自分で招いた結果、この男に体を差し出せばそれで済むと安易な考えしか浮かばない。
冷静になれば偶然ではなく、計画的な行動…一度で済むはずがない。そればかりか、もっと酷いことになる可能性だってあると想像つくのに、その時は考えられなかった。
誰も助けてくれないと諦め、抵抗を緩め、男は、ニヤリと不気味に笑った。
ゾワリと、鳥肌がたち、やっぱり無理だと、掴まれていた手を振り払い近くの路地に逃げ出したが、捕まってしまった時、慧が一人で戻ってきてくれた。
『おい、おっさん…未成年に何しようとしてるわけ?』
『この子とは、恋人同士なんだ…ちょっと、ケンカしてただけだ』
必死に、慧に向かって違うと左右に首を振った。
『へー、恋人同士ね…とてもそうには見えないけど』
『赤の他人は引っ込んでろ。ガキのくせにナイト気取りか?こいつには散々お金を使ったんだ。だから俺の女なんだよ』