愛してるって気持ちだけじゃ届かない

彼女には彼氏がいて結婚の約束までしていると噂を聞いた時、真っ先に忠告したが、『部外者が口を出すな』と冷たく言われ、私の好意を無下にする慧に腹をたて、自棄になっていった。

慧を忘れてのめり込める相手がほしく、好きでもない男と付き合った。だが、体を求められると尻込みし数日で別れたりを繰り返していた。

慧には、ただ、呆れられて終わるだけ…

二十歳を過ぎ、お酒の席で無茶な飲み方をしても、慧は介抱をしてくれるだけで、女として見てくれず男女の仲になることはなかった。

社会人になった時は、さすがに悪足掻きはやめて友達でいる事を選んだ。

が、特定の彼女も作らずに、いまだにあの彼女と繋がっているのが、腹立たしい。

今も私と会話をしながらも、彼女を気にしてスマホばかり見ている。

「誰かと待ち合わせしてた?」

「…べつに」

すると、スマホが振動し画面を開いた慧は、すぐに表情を曇らせた。

振られたんだ。

いい加減、報われない恋なんて諦めればいいのに…

それは私も同じなのだ。
友人のポジションにいながら、いまだに拗らせている。

「…なぁ、つきあえよ」

「はぁ?まさか、私のこと好きなの?」

「そんなわけあるか…今日は俺の話につきあえって言ってるんだ」
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