愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「毛利さん、泣いた?」
「ど、どうしてわかるの?」
「目が赤いから」
小さな角度で首を傾げ、月島くんは弱り顔で笑う。
「あの人を、河本さんを忘れるためでもいいから、俺と結婚しよう? 俺を利用してよ」
私の両手を包み込み、ギュッと握る。
「いつか必ず、俺を好きにさせるから」
自信に満ちた台詞を、それに比例した凛々しく引きしまった面持ちで言う月島くんをぽかんと見上げる私は、さぞかし間抜け顔だろう。
「だからこれからは、毛利さんは俺だけを見てて」
河本さんの結婚式で寂しくて泣いてしまったけれど、月島くんの顔を見た瞬間に安心感とうれしさがこみ上げてきたのは紛れもない事実だ。
忘れるために利用するのは月島くんに失礼だし気が引けるけれど、もう会えなくなる方が残念だって思ったから。
「うん……」
首を深く折り曲げてこくりと頷く。
「え!」
すると驚いたような短い声が真正面から聞こえ、私は上目遣いで月島くんを見た。
「ありがとう。夢が叶ってうれしい」
「夢?」
大げさだなぁ、と思って油断していた私の体を、月島くんが抱き寄せる。
「性格が変わってなかったって評価してもらえたのかな」
月島くんはソフトな加減で抱きすくめ、私の耳元でささやいた。
「変わってた。いい意味でね」
私はどうか、この狂ったように大きく速い心音が、月島くんに伝わっていませんようにと心から祈る。
きっと月島くんが引くくらい、早鐘を打っているから。
「それで、月島くんをもっと知りたいと思ったの」
類まれなカッコよさなのにいじけたような卑屈な発言をするところとか、心配性すぎるところと、ハッと声を上げて笑う無邪気な表情、ときどきすごく強引になってドキドキさせる力強い眼差し。
いつも完璧に整っている表情が崩れる、新鮮な一面を近くで見ていたいと、私だけが見られたらいいのに、と。
月島くんと同じことを思った。
ゆっくりと名残惜しそうに体を離した月島くんが頬を綻ばせる。
それは今日の木漏れ日や、花の香りがする風よりも優しくて、ずっと見ていたくなる笑顔だった。
「ど、どうしてわかるの?」
「目が赤いから」
小さな角度で首を傾げ、月島くんは弱り顔で笑う。
「あの人を、河本さんを忘れるためでもいいから、俺と結婚しよう? 俺を利用してよ」
私の両手を包み込み、ギュッと握る。
「いつか必ず、俺を好きにさせるから」
自信に満ちた台詞を、それに比例した凛々しく引きしまった面持ちで言う月島くんをぽかんと見上げる私は、さぞかし間抜け顔だろう。
「だからこれからは、毛利さんは俺だけを見てて」
河本さんの結婚式で寂しくて泣いてしまったけれど、月島くんの顔を見た瞬間に安心感とうれしさがこみ上げてきたのは紛れもない事実だ。
忘れるために利用するのは月島くんに失礼だし気が引けるけれど、もう会えなくなる方が残念だって思ったから。
「うん……」
首を深く折り曲げてこくりと頷く。
「え!」
すると驚いたような短い声が真正面から聞こえ、私は上目遣いで月島くんを見た。
「ありがとう。夢が叶ってうれしい」
「夢?」
大げさだなぁ、と思って油断していた私の体を、月島くんが抱き寄せる。
「性格が変わってなかったって評価してもらえたのかな」
月島くんはソフトな加減で抱きすくめ、私の耳元でささやいた。
「変わってた。いい意味でね」
私はどうか、この狂ったように大きく速い心音が、月島くんに伝わっていませんようにと心から祈る。
きっと月島くんが引くくらい、早鐘を打っているから。
「それで、月島くんをもっと知りたいと思ったの」
類まれなカッコよさなのにいじけたような卑屈な発言をするところとか、心配性すぎるところと、ハッと声を上げて笑う無邪気な表情、ときどきすごく強引になってドキドキさせる力強い眼差し。
いつも完璧に整っている表情が崩れる、新鮮な一面を近くで見ていたいと、私だけが見られたらいいのに、と。
月島くんと同じことを思った。
ゆっくりと名残惜しそうに体を離した月島くんが頬を綻ばせる。
それは今日の木漏れ日や、花の香りがする風よりも優しくて、ずっと見ていたくなる笑顔だった。