愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「ご馳走様」
「お粗末様でした」


月島くんは後片付けを手伝ってくれた。

グレーのカットソーの袖を捲った月島くんは、キッチンに立って洗い物をしているだけでお洒落でカッコいい。
まるで洗剤のCMみたいに絵になる。これが日常だなんてなんだか信じられない。


「毛利さん、疲れたでしょ。先にお風呂どうぞ」


片付けが終わると、エプロンをはずす私に月島くんが言った。


「月島くんから先に入って。私、たぶん長いし」
「わかった。俺シャワー早いから、先に使うよ」


という宣言通り、月島くんはさっさと行水してリビングに戻って来た。
白いTシャツに、ダボッとしたグレーのルームパンツ。
バスタオルを首にかけ、ポタポタと髪から滴る水をぞんざいに拭いている。


「先にいただくね」


楽しそうに言いながら、冷蔵庫からビールを取り出して開栓すると、グイッと飲んだ。
その一部始終を見つめていた私は、目線に気づいた月島くんと不意打ちで目が合い、パッと大げさにそらす。


「毛利さんもお風呂どうぞ」
「あ、うん!」


見つめていたとバレたのが決まりが悪くて、私は回れ右をするとぎこちない動きでバスルームに向かった。

お風呂を終えてパジャマ姿でリビングに戻ると、月島くんの姿がない。
寝室をノックすると、「はーい」というのんびりとした返事がかえってきた。

ベッドに座る月島くんは読んでいた本から目を離し、ドアを開けて部屋に入った私をじっと見つめた。


「髪、ちゃんと乾かしてきた?」


私は肩にかかるほどの髪の毛先を指で摘む。


「うん、ちゃんと乾かさないと寝癖ついちゃうから」
「なんか、色っぽい。湯上がりのパジャマ姿」
「えっ……」


ふっと睫毛を伏せた月島くんは、前触れなくドキッとさせた私を満足げに見た。

一緒に暮らすのも、友だちの家に居候するような感覚だったけど、違うんだ。
私たちは男女だし、ましてや夫婦になる。

私は大事な部分を見落としていたかもしれない。

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