愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「い、色気だなんて……! ないない。すっぴんだし、パジャマも着古したやつだし」
「俺はそのままでじゅうぶん、そそられるけど」
「そっ……⁉」


そそられる⁉

依然ドアの前に立ち尽くしたままの私が目線を右往左往させている間に、月島くんはベッドから立ち上がる。

そして、そわそわする私に近寄ると、うしろから肩に触れた。


「捕まえた」


背後から覆いかぶさるように、体ごと包み込む抱きしめ方。
月島くんの心音が、ぴったりと張りついた背中に感じる。


「は、離れた方がいいよ! せっかくお風呂に入ったのに変な汗かいちゃったし」
「俺もだよ。焦ってるから汗かいてるし、緊張してる」


穏やかな声には少し、笑いが籠もっている。
嘘つき。自分ばっかり余裕なくせに。


「やっと独り占めできるんだから、ちゃんと口説かせてよ」


月島くんは私の両肩を掴むと、くるりと体を反転させる。
すっぴんと赤面がダブルで恥ずかしくて、口を結んで窺うように目線を上げる。

すると、顔をバッとそむけて口もとを手のひらで押さえた月島くんが、堪えるような声で言った。


「ヤバい、かわいすぎ。まともに食らうと平静じゃいられないな……」


深呼吸する間があってから、さっきからたじろいでばかりの私の目を真っ直ぐに見て、チュッと額に素早くキスをした。


「今夜は、これで我慢しとく」


キョトンとする私に、月島くんはいたずらに笑う。


「でも俺、これからはガンガン攻めるから」


挑発的な言葉とは裏腹に、私の肩をポンとなでる手のひらの動きはとても優しい。
まるで、私を安心させるためかのよう。
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