愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「ど、どうしたの?」


上半身を起こして顔を覗き込むと、後頭部と赤くなっている耳だけが見えた。


「わー、俺自爆した」


照れているのかしら……?

悔しそうに声を籠もらせて言ってから、顔から布団を剥がした涼介さんは、もそもそと布団の中で手をまさぐった。


「ベッドから落ちないでね、菜緒」


私の手を探しあて、ギュッと手を握る。
私のは緊張で少し湿っているけれど、手のひらから体温が伝わって心地よかった。


「おやすみ、涼介さん」


涼介さんは目を閉じたけど、目蓋がピクリと動いた。
どうやら狸寝入りを決め込んだらしい。

ぷっと小さく吹き出して私も目蓋を閉じる。涼介さんのお陰で緊張がほぐれたけれど、私はお見合いのときから感じていた疑問を再び抱いた。

涼介さんは、一体私のどこを好きになってくれたんだろう。
どのタイミングで? いつから?

それが謎だから、結婚に現実味が湧かないのかもしれないなと思いながら、私は眠りについた。

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