愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
◯
「菜緒、ちょっといい?」
翌日、毛利亭でランチタイムが終わりひと息ついたとき、母に呼ばれた。
「お母さんたち、菜緒をランチタイム専任にしようと考えているんだけど」
「え? ランチタイム専任?」
私は戸惑った目を母に向ける。
「そうしたら、夜は家にいられるでしょう? 涼介くんも忙しい身だろうし、その方が家事をきちんとできてサポートしてあげられるかと思って」
両手をぱちんと合わせた母が、うれしそうに言った。
「うん……涼介さんにも相談してみるね」
なんだか戦力外を言い渡されたようで、私は不服な気分で頷いた。
初夏とはいえ、まだ五月だというのに今日は気温が高く、汗ばむ陽気だった。
庭に出て、清々しい空気を胸いっぱいに吸い込む。
「日差しが強いな……」
額にじわっと滲んでくる汗を、手の甲で拭った。
『毛利さん、仕事続けるの?』
私が毎晩家にいられるとしたら、涼介さんはどう感じるだろう。喜ぶだろうか。
母の言う通り、その方が毎晩温かい料理を出せるし、体調管理に気を配れるかもしれない。
料亭で働く以上、夜に大事な会合が行われる部屋について責任を持ってお客様のお世話をしたいと思うけれど。
自分の都合だけ考えてたら、ダメだよね。
母がせっかく提案してくれたんだもの、前向きに考えよう。
「菜緒、どうしたんだ? 思いつめた顔して」
「っわ!」
うしろから肩をポンと叩かれて、私は鳥肌が立つほど驚いた。
前かがみになって転びそうになった体勢をなんとか立て直す。
「菜緒、ちょっといい?」
翌日、毛利亭でランチタイムが終わりひと息ついたとき、母に呼ばれた。
「お母さんたち、菜緒をランチタイム専任にしようと考えているんだけど」
「え? ランチタイム専任?」
私は戸惑った目を母に向ける。
「そうしたら、夜は家にいられるでしょう? 涼介くんも忙しい身だろうし、その方が家事をきちんとできてサポートしてあげられるかと思って」
両手をぱちんと合わせた母が、うれしそうに言った。
「うん……涼介さんにも相談してみるね」
なんだか戦力外を言い渡されたようで、私は不服な気分で頷いた。
初夏とはいえ、まだ五月だというのに今日は気温が高く、汗ばむ陽気だった。
庭に出て、清々しい空気を胸いっぱいに吸い込む。
「日差しが強いな……」
額にじわっと滲んでくる汗を、手の甲で拭った。
『毛利さん、仕事続けるの?』
私が毎晩家にいられるとしたら、涼介さんはどう感じるだろう。喜ぶだろうか。
母の言う通り、その方が毎晩温かい料理を出せるし、体調管理に気を配れるかもしれない。
料亭で働く以上、夜に大事な会合が行われる部屋について責任を持ってお客様のお世話をしたいと思うけれど。
自分の都合だけ考えてたら、ダメだよね。
母がせっかく提案してくれたんだもの、前向きに考えよう。
「菜緒、どうしたんだ? 思いつめた顔して」
「っわ!」
うしろから肩をポンと叩かれて、私は鳥肌が立つほど驚いた。
前かがみになって転びそうになった体勢をなんとか立て直す。