愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「うん、俺が将来建てたいと思ってたマンションなんだ」
「すごいなって思ったんだよね。絵も上手だし、こんな素敵なお城みたいなマンションに住めたらいいなって」
「あのときも菜緒は褒めてくれたね」
涼介さんは穏やかに目を細める。
たしかにこの絵を見たときは、興奮して褒めたっけ。
お化け屋敷みたいだとバカにされる実家の古い家屋に比べれば、当時の私にとってはお城の方が何倍も素敵に見えたから、なんだけど……。
「菜緒がすごいって、住んでみたいって喜んでくれたのがうれしくて、未だにこの絵を大切にしているんだ」
「えっ、そうなの?」
「あの頃から菜緒の笑顔が好きだったんだ。初恋だった」
私の目を見てはにかんだ涼介さんは、首をすくめて隣に座った。
「菜緒は気づいていなかっただろ」
「うん……」
小学生の頃から思ってくれていただなんて、予想もしていなかった。
だってあの頃から涼介さんは人気者で、平凡な私とは住む世界が違うと思っていた。
「執着が強すぎて、引いてる?」
涼介さんに顔を覗き込まれ、私は飛び跳ねるくらい大げさなリアクションで身を引く。
「そ、そんなことはないよ!」
そんなことはない、けれど。
自分がビジネスのために利用されたのではないかと疑っていた私は、涼介さんの思いをなにも知らなかった。
自分本位に考えていたのがすごく恥ずかしい。
「そう?」と首を傾げる涼介さんは、私を訝るような目で見つめている。
涼介さんも私との間のやり取りで、うれしくなったり不安になったりするんだ。
私と一緒だ。
「私、今日ね」
「うん」
「涼介さんのご両親がすごく優しくて、とっても心が温かくなったの。その前は少し不安な面もあって、胸が痛かったりもして」
「まあ、俺が強引だったから、菜緒も困ったよね。ちょっと焦ってたから……ごめん」
私の両手を包み込んだ涼介さんは、気遣うように言った。