愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「ううん。涼介さんの言動一つひとつに舞い上がったり、悩んだり、そういう心境の変化に自分でも驚いていて」


その理由に、私はもう気づいている。
どうして涼介さんに、私の心をこんなにもかき乱されるのか。


「なにが言いたいかと言うと、今、すごくうれしい。涼介さんの気持ちを聞けて」


緊張で声が揺れるけれど、勇気を振り絞るつもりで涼介さんの手を握り返す。
今の私が伝えられる精一杯の正直な気持ちだった。

涼介さんはうつむいているので、前髪が顔を隠して表情がよく見えない。
無言状態が続いて空気が薄く感じ始めたとき、ようやく涼介さんが顔を上げた。


「菜緒はさ、俺の自制心を鍛えてくれてるの?」


口の端をクイッと上げ、涼介さんは片眉にアクセントをつける魅力的な笑顔で言った。


「へ……?」


自制心?
言葉の意味がわからずキョトンと見返す私に、涼介さんはもどかしそうに続けた。


「そんなかわいいこと言うなよ。襲いたくなるだろ」


サラッと飛び出した台詞に、私は耳を疑う。


「お、襲⁉」
「冗談だよ」


笑って一蹴した涼介さんだったけど、ギョッと目を見開いた私は止めどなく顔が熱くなって、しばらく胸のドキドキが収まらなかった。

それから私たちはご両親と一緒に夕飯を頂いて、月島邸から帰宅した。
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