愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「菜緒に誰かいい奴がいたら奪うつもりだったし、もっと強引な手を使ってでも俺の方を向かせるつもりだった」


その指輪は私には大きくて、宝石が回るくらいブカブカだった。


「でも、ゆっくりでいいから。この腕の中にいてくれるなら、もう焦らないから」


サイズを気にする素振りなど微塵も見せず、涼介さんは再び私の体を強く抱きすくめる。


「菜緒の気持ちが俺に向いてくれるまで待つから。だからいつか、心も体も俺のものになって」


懇願するようなきゅうきゅうとした声は、私の胸を締めつけた。
それはうしろから拘束されているからではなくて、心の奥を掴まれたようにキュンと響くのだ。

満たされているのに、歯がゆい。こんな気持ちになるのは初めて。


「私ね、仕事で河本さんに会っても、頭の中は涼介さんのことばかりで……」


私は自分の胸の内も余すところなく打ち明けたくなった。

勝手に疑心暗鬼になったり、裏切られたくなくて苦しくなるのは、涼介さんを本気で好きだから。


「藤井さんを気にして助けに来てくれたときもホッとしたし、今日涼介さんの気持ちを聞いてすごくうれしくて」


途切れ途切れにそこまで言うと、涼介さんは私の体を離し、くるりと反転させる。
そして熱の籠もった眼差しを私に向けた。


「それって俺、自惚れてもいいの?」


真剣な視線が交わって、身じろぎできない。
どんどん心拍数が上がって戸惑うけれど、私は涼介さんから目をそらさずに口を開いた。


「私、涼介さんが好き」


涼介さんの引きしまった顔が緩んだ。
眉根に皺を寄せて微笑むと、腕を広げて私を迎えた。


「実感させて。やっと、手に入ったって」


今度は正面から抱き寄せる。


「もう、一生離さない」


鳥肌が立った。
思いが通じ合うことがこんなに幸せなのだと実感する。
< 66 / 119 >

この作品をシェア

pagetop