こころの詩

雪のチラつく寒い冬
昼下がりに見知らぬお婆さんが
息を切らしてバスを追い駆けてた
バスは待たずに走り去った

見兼ねて声を掛けた~
「ほら、乗りなよ!」
お婆さんは感涙しながら乗り込み
「すみません、駅までお願い出来ますか」
病院へ受診するのにバスに遅れると電車に
間に合わず行けなくなってしまうとのこと。

慌てなくてもバスより早く駅に着いたら、
お婆さんは何やら小銭をかき集めだした。
「何やってるの?」
「ほんの気持ちです、お礼に」
「そんなものもらったらタクシーになるでしょ、
早く電車に乗って!」

お婆さんは何度も頭を下げ、お礼を言いながら
ホームへ入って行った。
それを見届けると、気持ちがとても温かくなった。

会社に着いて大事な会議に遅刻して物凄く上司に
怒鳴られた。

だけど会議に遅刻した事より、見ず知らずだけど
お婆さんが病院に間に合ってくれた、その事の方が
大事に思えた。
だから僕は一切何も言い訳をしなかった・・・。
後で上司、先輩、社長からの恫喝と始末書が待っていた。

数十年も経った今もたまに寒い冬の昼下がり、
心が温かくなった記憶が甦る。



< 6 / 11 >

この作品をシェア

pagetop