俺も好き。ごめん。
「そろそろ掃除終わりでいいだろ」

「あ、うん、そうだね」

今、この瞬間も君を抱きしめて、好きだと言いたい衝動に駆られてしまう。

ダメだと言われたものは余計にしたくなってしまう、みたいな。

それを隠すために、必死なのに君はたまに深いところをついてくる。

「ねえ、和哉くん」

「ん?」

すっかり、掃除道具を片付け終えた君が、おかしいくらいに背筋を伸ばして、こちらを見ていた。

「わたしね、言わなきゃいけないことがあるの」

その言葉に察して、続きを言わせてはダメだと、聞いてしまってはダメだと思うのに、どうにも声が出ないし、動けない。

やめてくれ。

俺の決心は、そんな柔なものじゃなかった。

それを崩すようなことを言うのは、やめてくれ。
なあ、俺はビョーキなんだよ。

一応手術は受けても全然治らないような、病気なんだよ。

「あのね……和哉くんが好きなの」

あー。

ここまできてしまったら、断らなきゃいけないのは、わかってる。

君のために。

……俺のために。

だから。
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