私の一部を受け取ってください
「瑞穂ちゃん、今まで本当に頑張ったよね。辛いよね。あたしに、全部ぶつけて」

咲がそう言うと、瑞穂の口から嗚咽が漏れる。肩を震わせ、泣きじゃくる瑞穂の姿を見るのは初めてだ。

咲はあることを決意した。



そして高校二年生の秋、咲は入院している瑞穂の病室をノックした。その目は赤く腫れている。

「咲ちゃん、目が真っ赤だよ!どうしたの?」

本を読んでいた瑞穂は驚く。咲はまだ話すタイミングじゃないと「何でもないよ」と誤魔化した。そして、瑞穂が横になっているベッドの横にある椅子に腰掛ける。

「入院生活、長くなってきたから退屈なんだ〜……。腎臓の調子、いつもより悪いのかも……」

瑞穂はそう言い、寂しげに笑う。瑞穂は今腎臓を提供してくれるドナーを待っているところだ。しかし、何年も待っているがまだ見つかっていない。

日本では臓器提供をしてくれる人は少ない。他人から腎臓をもらうことは気の遠くなるような時間がかかる。それを瑞穂も咲も痛いほどわかっていた。
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