私の一部を受け取ってください
咲は暗い空気をなんとかしようと試みるが、うまくはいかない。明るい空気で言いたかったんだけどな、と咲は苦笑しながら言うことにした。

「そういえばさ、もうすぐ瑞穂ちゃんの誕生日だよね?」

「うん……。もしかしたら、これが最後になるかもしれないけど……」

そんなことはさせない、咲は拳を握り締める。何年先でも瑞穂の誕生日を一緒に祝いたいのだ。

「急だけど、誕生日プレゼントだよ」

咲はそう言ってかばんの中に隠した紙を瑞穂に見せる。そこに書かれている内容は、きっとどんな宝物が発見されたことより瑞穂にとって素晴らしいことだろう。

「咲ちゃん……これ……」

瑞穂の目が驚きで見開かれ、すぐに涙が目に溜まっていく。その涙は悲しいものではない。咲は瑞穂の手を優しく包んだ。

「検査を受けたの。あたしの腎臓は瑞穂ちゃんにあげることができるんだ」

赤の他人で腎臓を提供できる確率は一万人に一人ほどしかいない。その一万人に一人の奇跡が、咲と瑞穂に起こっているのだ。
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