熄えないで
友達は蒼志くんっていうのか。
爽やかな雰囲気の名前がよく似合っている。
「偶然だよね。私も吉野っていうの。吉野 二千花」
「よしの?」
「そう。蒼志くんが図書室に入ってきたとき、『ヨシノ』って言ってて、私が呼ばれたのかと勘違いしちゃって。その流れで話聞こえたんだ」
隠すことではなかった。
事実、蒼志くんが彼の名前を呼んでいなければ、ヨシノくんの求めている本の名前までは聞いていなかったと思う。
偶然に偶然が重なった。
今日ここで彼らと知り合ったのは、ただそれだけのきっかけだ。
「ヨシノくん、下の名前は?」
「え?」
「ヨシノ、なに君?」
自分の名字が吉野だから思い込んでいたのかもしれない。
ヨシノというのが名字だなんて、彼は一言も言っていなかったというのに。
「ああ、先輩違いますよ」
「違う?」
「下の名前がヨシノ。俺、山木 吉乃(やまき よしの)っていいます」