熄えないで
スカートの上でぎゅっと拳を握りしめる。
助けてもらってばかりの自分が、自分のことで精一杯の自分が、どうしようもなく嫌になった。
「…押し付けるつもりはないです。先輩が、何も知らないふりして後夜祭が来るのを待ってても何も言いません。まあ、最低だなっては思いますけど」
「…、うん…」
「けど、吉野先輩ってなんだかんだお人好しだってことも知ってますよ、あたしは。ライバル視してる相手の情報を手に入れることなんて基本中の基本だし」
蛍原さんが、悔しさと優しさが混じった笑顔を浮かべる。
後輩の女の子に、しかも私のことが嫌いな女の子にこんなふうに背中を押してもらうなんて、私は本当にダメダメだ。
「…蛍原さん、あり、」
「お礼とか要らないです。あたしがあたしのためにやってるので。早く行ってくださいよ」
「、うん…っ」
どこまでも蛍原さんは強い。
私も見習わなくちゃいけない。
ガタリ、席を立つ。
「っ先輩、」
その声と同時に腕を掴まれたのは、反射的なものだった。