熄えないで
私の中途半端な気遣いは、どれだけ彼の気持ちを踏みにじってきたのだろう。
蛍原さんのアピールを 彼はどんな風に躱してきたのか。
蛍原さんが「奪えない」って思うくらいの、私への気持ちをどんなふうに表していたのか。
彼がどんな気持ちで今日も後夜祭を迎えようとしていたのか。
私はなにも知らなかった───いや、知ろうとしなかった。
「…ん…」
額に当てていた手を離す。
成川くんがうっすら目を開け、私の姿をとらえて固まった。ぱちぱちと瞬きをしている。
どうして私がここに居るのか理解できていないようだった。
「にちか…?なんでここに、」
「蛍原さんに会って教えてもらったの。具合、どう?」
「…、あ、寝たらだいぶ良くなったけど…、まって、動揺してる…」
ゆっくり身体を起こした成川くん。目をこすり、私の存在を確かめるようにじっと見つめられる。
あんまり凝視されるものだから、なんだか耐えられなくてパッと視線を逸らすと、「、あ、ごめん」と小さく謝られた。