熄えないで
「…ふ。なんで二千花が泣くの」
「ごめ、…」
「…ううん。けど、俺のこと考えて、苦しくて泣いてんだよね。不謹慎だけどさ、俺はそれでも嬉しいって思ってる。きもちわるいよな、ごめん」
必死に首を横に振る。
こんなにもまっすぐな愛をもらって、気持ち悪いなんて思うわけがない。その気持ちに応えられないからこそ苦しいのだ。
こんなにも素敵なひとを好きになれなかった。
後から後悔するかもしれない。
もっとちゃんと、最初から成川遥汰という人間とちゃんと向き合っていれば、未来のどこかではきみのことを好きになっていたかもしれない。
けれどもう、それは全部もしもの話だ。
私は彼のことを好きになれなかった。
それだけが、今、私と彼の間にある事実。
「俺もさ、ずっと必死だったんだ」
成川くんが、ぼんやりと過去を思い出すようにつぶやいた。