熄えないで




「…ふ。なんで二千花が泣くの」

「ごめ、…」

「…ううん。けど、俺のこと考えて、苦しくて泣いてんだよね。不謹慎だけどさ、俺はそれでも嬉しいって思ってる。きもちわるいよな、ごめん」



必死に首を横に振る。

こんなにもまっすぐな愛をもらって、気持ち悪いなんて思うわけがない。その気持ちに応えられないからこそ苦しいのだ。



こんなにも素敵なひとを好きになれなかった。

後から後悔するかもしれない。

もっとちゃんと、最初から成川遥汰という人間とちゃんと向き合っていれば、未来のどこかではきみのことを好きになっていたかもしれない。



けれどもう、それは全部もしもの話だ。


私は彼のことを好きになれなかった。
それだけが、今、私と彼の間にある事実。




「俺もさ、ずっと必死だったんだ」



成川くんが、ぼんやりと過去を思い出すようにつぶやいた。



< 109 / 205 >

この作品をシェア

pagetop