熄えないで







「俺、自分が吉乃なんで。二千花先輩って呼んでいいですか」

「え、あ、うん。じゃあ私は山木くんの方がいいかな」

「んー…俺あんまり名字で呼ばれたことなくて。先輩さえよければヨシノのほうがしっくりきます」



肩を並べて歩く帰り道。成行きのまま一緒に帰ることになった私と彼は、初対面特有のそんな会話をしていた。


吉乃くん。素敵な名前だ。



「先輩電車ですか?」

「あ、うん。吉乃くんは…」

「俺も電車。上りです」



私も上りだから、どちらかの最寄り駅が来るまで一緒だ。記憶にはないけれど、もしかしたら今までもすれ違うことがあったのかもしれない。

まあ、同じ学校だしそれほど珍しいことでもないけれど。



「先輩、よく図書室に居ますよね」



ふと、吉乃くんがそんな話題を持ちかけた。



「あー…うん、放課後は大体いるかなぁ」

「俺は時々。先輩ほどじゃないけど、本は結構好きです」


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