熄えないで
◇
「俺、自分が吉乃なんで。二千花先輩って呼んでいいですか」
「え、あ、うん。じゃあ私は山木くんの方がいいかな」
「んー…俺あんまり名字で呼ばれたことなくて。先輩さえよければヨシノのほうがしっくりきます」
肩を並べて歩く帰り道。成行きのまま一緒に帰ることになった私と彼は、初対面特有のそんな会話をしていた。
吉乃くん。素敵な名前だ。
「先輩電車ですか?」
「あ、うん。吉乃くんは…」
「俺も電車。上りです」
私も上りだから、どちらかの最寄り駅が来るまで一緒だ。記憶にはないけれど、もしかしたら今までもすれ違うことがあったのかもしれない。
まあ、同じ学校だしそれほど珍しいことでもないけれど。
「先輩、よく図書室に居ますよね」
ふと、吉乃くんがそんな話題を持ちかけた。
「あー…うん、放課後は大体いるかなぁ」
「俺は時々。先輩ほどじゃないけど、本は結構好きです」