熄えないで
「そういえば二千花、13時からバレー部のパフォーマンスじゃなかった?友達、出るんじゃない?」
「えっ、もうそんな時間?」
話題を変えるように成川くんにそう言われ、ハッとして時計を見ると、12時45分となっていた。
そんなに時間がたっているとは思わなかった。
各部活のパフォーマンスは人気なので、少しはやく行かないと席は埋まってしまうのだ。
「ごめん、…私もう行かなくちゃ」
「来てくれて嬉しかった。ありがとう」
「…、っ」
これで最後。
成川くんとは、これからはただのクラスメイトになる。
「…今までありがとう」
「俺の方が。ごめんね」
あやまらないで。
成川くんはずっと素敵な人だった。
これからは、同じ温度の愛を返してくれる人と幸せになってほしい。
けれどそれは、今、私が言う台詞ではない。
全部今更だ。私が彼に捧げる言葉のなかに、彼の未来に寄り添うものはひとつもない。
小さく首を振り、私は席を立つ。
「じゃあ、また、ね」
ごめんね、ありがとう───さよなら。
彼に背を向けて保健室を出る。
私がいなくなった後の保健室で 彼が涙を流していたことは、今もこれからも、私が知ることは無い。