熄えないで




空気が少し重くなる。
私から蛍原さんにかける言葉は思いつかなかった。



成川くんは私と別れたことで正式にフリーなのだ。

蛍原さんの恋が前進してくれたらいいな、と思うけれど、根が良い子の蛍原さんのことだ。
そんなことを言ったらきっと「先輩のそういうとこが嫌いです」と言われてしまうかもしれない。



恐る恐る視線を合わせる。

彼女の表情だけでは、何を思っているかは読み取れなかった。




「あたし、今からかいちょーのところに行きます」

「…そっか」

「かいちょーのこと、慰められるのあたしだけだと思うんで。弱ってるところに浸け込むずるい女にでもなってやりますよ」



彼女なりの、恋の向き合い方。

やっぱりすごくかっこいいなと思う。


ふふっと笑えば、「何呑気に笑ってるんですか」と不機嫌な声が返ってきた。



< 117 / 205 >

この作品をシェア

pagetop