熄えないで





家までの道のりを歩きながら今日起きた偶然を振り返る。




偶然が重なるっておもしろい。


このまま、なにかのきっかけで吉乃くんと恋に落ちたりしたらもっと面白いなあ。

吉乃くんが彼氏だったら、趣味も合うし楽しいだろうな。
休日はいろんな街の図書館を巡ったり、カフェでまったり読書をしたり。

うん、悪くないかもしれない。




付き合うなら落ち着いた人が良い。
そう、それこそ吉乃くんみたいな、本が好きで、落ち着いていて大人びたひとが理想だ。



略奪愛に興味はないし、彼に一目惚れをしたわけでもない。
もちろん、彼を好きになったわけでもない。

久しぶりに本の話で盛り上がれたのが嬉しかった。ただそれだけだ。




そもそも、吉乃くんには彼女がいる。

我ながら思い上がった妄想をしてしまったと思うけれど、妄想は私だけのもの。
誰にも邪魔はできない領域だ。



山木 吉乃くん。
図書館にいれば、きっとまた話す機会はあるだろう。





彼女持ちの吉乃くんと私が付き合う確率は10パーセントにも満たない。

この偶然が恋に発展する確率は───15パーセントが妥当だろうか。



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