熄えないで
「寝癖、ついてる」
「えっ。嘘」
「ホント。ほら、ここ」
今朝、いつもより少しだけ寝すぎてしまって時間がなかったせいかな。
それか、最寄り駅まで小走りした時に正面から風の抵抗を受けたせいかも。
彼の手が伸びてきて、そっと前髪に触れた。
ビクリ、反射的に目を閉じた。
「あれ。治んない」
「…気にしてないからそのままでいいよ」
「まあ、目立つほどでもないしね」
そう言って彼は笑った。
ほんの少しだけ、咄嗟に身を引いた私には気づいていないみたいだ。
「そういえば昨日───」
彼の他愛のない話に適当に相槌を打ちながや、ガタンゴトン……と一定の音を立てて走る電車に揺られて 降りる駅を待つ。
この時間を一人で過ごせたら、『消える、』の3巻を読み進められたなぁとか、毎日一緒に登校するのはちょっとなぁ、とか。
そんな最低なことは 決して言葉にはしない。
今日も、いつもと変わらない'憂鬱な朝'だ。