熄えないで
――ガシャン、
力が抜けて 持っていたスマホが滑り落ちる。
大きく響いたその音に、そばを行き交っていた人たちは一瞬だけ私に目を向け、そしてすぐに目を逸らす。
けれど、数メートル先に居た彼だけは、ゆっくりと振り返って私の姿をとらえた後、驚いたように目を開いたまま私を見つめている。
――吉乃くんに、夢中になるのが怖い
ふと脳裏を過った私自身の言葉。
こわいよ。
吉乃くんに夢中になって、それ以外何も考えられなくなるのがこわい。
吉乃くん、彼女いないって言っていたのに。
その子は誰?
吉乃くんは、私のこといまはどう思ってるの。
頭の中はそればっかりだ。
冷静に、なんてもう考えらない。