熄えないで
「ヨシノー」
図書室の隅。
本棚に並ぶように設けられたカウンター席に座って本を読んでいた私は、その声に反応するようにパッと顔を上げた。
それほど大きな声ではないけれど、静かな図書館では十分に聞こえる。
…図書室で私のこと呼ぶ人なんて居るっけ。
そんなことを考えながら声のした方を振り返ると、見たことの無い男の子が立っていた。
上靴に青のラインが入っているから2年生だろう。
「言ってたやつ、見つかった?」
「んー…や、無かった」
「じゃあ貸出中なのかもな」
彼の目線の先──本棚の影から、もう1人の男の子が姿を表した。同じように上靴に青のラインが入っている。
『ヨシノ』と呼ばれたのは彼だったのだと、なんとなく察しがついた。