熄えないで
背後からにゅっと顔を出した人物に驚いて思いっきり肩を震わせる。
びっくりした。心臓止まるかと思った。
「よ、吉乃くん…」
「おはようございます」
「おはよ…」
「先輩、会長と付き合ってたんですね」
何の感情も含まれていないような、そんな声だった。2人の背中を追うように校舎を見つめながら吉乃くんが言う。
「あれ見ても嫉妬とかしないんですか」
――あれ、
それは確かに、彼と蛍原さんのことを指している。
嫉妬か。私には程遠い概念かもしれない。
「…嫉妬はしたことないかも」
「先輩、会長のこと好きなんですか?」
「…え」
「先輩、電車に乗ってた時からあんまり楽しそうじゃなかった気がしたので。違ったらすみません」
昨日知り合ったばかりだし、彼のことを語るには日が浅すぎるけれど、吉乃くんは素直で───勘が良いのだと思う。