熄えないで
番外編
「吉乃くん、」
「はい」
「…キスしたい」
私の言葉に、吉乃くんは数秒固まった後、「…どうしたんですか」と 感情の読み取れない声で言った。
「…先輩?」
「……吉乃くんのばか」
どうしたんですかって、…そんなこと聞かないでほしかった。
黙ってキスで返事をしてくれたら、私が抱えている不安全部なくなったかもしれないのに。
吉乃くんは最近キスをしてくれなくなった。
付き合う前にしたこともあるし、付き合い始めてからは、もう何度も唇を共有してきた。
今更何も気にすることなんてないはずなのに、ここ1か月ほどでキスをする回数は劇的に減ったのだ。
付き合ってもうすぐ半年になるけれど、わたしと吉乃くんは、未だキス止まり。それなのに、そのキスすらもしてもらえなくなったら不安になるに決まっている。
こうやって人の気持ちには温度差ができてしまうのかなとか、吉乃くんが触れたいと思うほど私には魅力がないのかも、とか。