熄えないで
「…はあ、」
ため息疲れてしまった。
…どうしよう、すごく呆れられてる。
「あの、先輩、」
「…、」
「先輩、俺の気持ちわかってそれ言ってます?」
膝の上でぎゅうっと手を握りしめていた私に、そんな言葉が降ってきた。「え、」と声を零したのもつかの間。
「え───っ、」
噛みつくようなキスが落とされた。
あまりにも唐突で目を閉じる暇もなかった。唇を離し「…バカはどっちですか」と小さく呟いた吉乃くんの声がやけに鮮明に聞こえる。
状況が呑み込めずパチパチと瞬きをする私と、少しだけムッとした表情を浮かべている吉乃くん。
な、なに…いまのキスは、なんだ。
「…急にキスねだられる俺の気持ち考えてくださいよ、」
はあ…と再びため息をついた吉乃くん。
伸びてきた彼の右手が髪の毛に触れ、優しく耳にかけられる。すこしだけ触れ合った指先だけでドキドキしてしまうのは、吉乃くんだからだろう。
ゆっくりと交わった視線。
吉乃くんの耳が、ほんのり赤く染まっているのが見えた。