熄えないで
「蛍原もあからさまだけど…先輩も同じくらいわかりやすいと思いますよ」
「吉乃くん…同じ電車に乗ってたの?」
「今日いつもより早く起きたからあの電車に乗れたんです。そしたら先輩と会長が偶然同じ車両に居ました。まあ、俺は端の方に座ってたので先輩は気づかなくても無理はないです」
昨日からずいぶんと偶然が重なるものだ。
昨日、同じ路線を使っていることは分かったけれど、昨日の今日で遭遇するなんて、吉乃くんのほうが成川くんよりよっぽど運命なんじゃないか。
「会長のほうは二千花先輩のこと、ちゃんと好きそうに見えましたけど」
「あー…はは。そうかも」
「好きじゃないのに一緒に居るのって苦しくないですか?」
校舎に足を進めながら吉乃くんは直球過ぎる質問をしてくる。
攻めた質問を重ねられているのに不思議と嫌な気分にならないのは、聞いているのが吉乃くんだからだろうか。
彼の持つ雰囲気と、落ち着いた声色がそうさせているのだろうか。
それとも、あわよくば心の声が成川くんに伝わってほしいと、私自身が思っているから、だろうか。