熄えないで
成川 耀太(なりかわ ようた)。
それが、私の彼氏の名前だった。
生徒会長の彼は、成績優秀、容姿端麗、運動神経抜群───と言った具合に全てを兼ね揃えた完璧人間である。
告白されたのは2年生が始まってすぐの事だったので、1年半程前のことになる。
『吉野さんのこと、ずっといいなって思ってて。俺と付き合ってくれないかな』
成川くんとは同じクラスになったことはなく、それまで全く接点もなかったけれど、有名人であることは知っていた。
それもそのはず、完璧すぎる会長だと メイとレナが騒ぎ立てていたからだ。
でも、それだけ。
好きも嫌いも、成川耀太という人間に抱いたことはなかった。
告白も、最初は断るつもりでいた。
けれど、「返事はすぐじゃなくていい」と言われ、それ以上その場で発言することはできなかった。
メイとレナには「付き合っちゃいなよ!」と言われた。
幼馴染の双子――咲斗にも「おまえも一回男を経験した方が良い」と言われた。
双子の片割れの瑛斗だけが、「よくわかんない男ならやめとけよ」と言った。