熄えないで




空が青い。

夏と呼ぶにはもう遅いけれど、秋と呼ぶにはまだ早い。そんな微妙な気温が続く9月某日の昼下がり。



――俺は、そのくらいずるくて贅沢な方が好きですよ



今朝、吉乃くんに言われた言葉の意味が相変わらず理解できないままの私は、応えにたどり着かないまま昼休みを迎えていた。


お母さんの作った甘い卵焼きを口に運び、再び脳内で再生される吉乃くんの声に思考を奪われる。




ずるくて、贅沢。



私が、好きでもない人と付き合っていることが、だろうか。

成川耀太という、王子さまのような人をそばに置いておいて、その好意を真摯(しんし)に受け止めていないことが、かもしれない。



きっと私のこころの声を聞いて苦しむのは成川くんなのに、“好きじゃない人と一緒に居るのを苦しい”と思っている私が、ずるくて贅沢?


わからない。

どれもこれも事実で正解のような気もするけれど、吉乃くんの中の正解ではないような気がするのだ。


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