熄えないで
うちの学校の文化祭は10月頭に行われることになっている。
文化祭は生徒会が中心となって運営しているので、夏休み明けから文化祭当日まではかなり仕事が立て込んでいるらしい。
去年のこの時期もそうだったので覚えている。
蛍原さんが今朝言っていた、「彼女とのんびり登校している暇はない」というのは、彼女の成川くんに対する好意は置いておいたとしても的を得た言葉だった。
これで半月は、朝の電車でも本を読むことができる。
「…だよね、二千花は」
「え?」
「いや。なんでもないよ」
ぽつり、成川くんが何かを呟いたようだけど、それはうまく聞き取れなくてごまかされてしまった。
「文化祭は一緒に回ろうな」
「…うん」
メイとレナは、当日部活で出しものがあると言っていたし、回れたとしてもずっと一緒に居れるわけではない。
かならず私には一人になる時間がやってくるし、その時間を成川くんが見逃さないわけもないのだ。
頷いた私に、成川くんは眉を下げて笑った。
文化祭まであと半月。
それは、一人の時間を堪能できる期間と比例している。
彼に抱く 後ろめたい気持ちと この最低な考え方の終わらせ時を、私はずっと逃し続けている。