熄えないで
「ニチに、他に好きな人ができればいいんだけどな」
「気になるひととかいないの?」
「そんなの…」
いない、
そう言うつもりが、ふと脳裏をよぎった“彼”の顔に、きゅっと下唇を噛む。
「え、もしかしているの?」とニマニマする咲斗に、慌てて首を振る。
どうしてこのタイミングで吉乃くんの顔が浮かんだんだ。変なの。
「にっちゃん、まじで気になるやついんの?」
「…いや、気になるとかじゃないよ。趣味が同じで少し話すようになった程度で」
「趣味って読書?ニチにぴったりじゃん」
「ね、どんなやつ?」
どんなやつ…か。
年下で、本が好きで、映画も好きで、頭も良くて。あと、すごく素直な子。
それから───…
「…ヨシノ」