熄えないで
「え?」
「吉乃くんっていうの。名前が、すごく似合う男の子」
山木 吉乃。
やっぱり、名前がすごく素敵で吉乃くんにぴったりだ。
「ふうん…」
「け、けど、それだけだよ。本当 知り合ってまだ1週間も経ってないの」
咲斗があからさまににやにやしているのがわかるから、自分の発言を振りかえって少しだけ恥ずかしくなった。
ごまかすように目の前のかき氷にスプーンを刺す。
「まあでも、あれだな。好きかどうかは置いておいても、ニチが一緒に居て楽しいと思える相手なら、俺はそのヨシノってやつとの時間を大切にした方いいと思う」
男を経験した方が良いとかなんとか言っていた咲斗がそんなことを言うなんて。
楽しいと思える相手。
たしかに、もう成川くんと居ても楽しくないのは事実だ。
“嫌い”よりももっと最低な感情ばかりを押し殺して隣に居るのは、お互いのためとは言えない。
そうだよね、ちゃんと分かってるよ。