熄えないで
ーー『消える、』
そんな偶然があるか、と思った。
静かに手元にある本を閉じ表紙を見る。私がもう少しで読み終えようとしていたそれには、確かに『消える、 弐』と書かれてあった。
「それとも帰りに図書館行くか?」
「んー…図書館で借りると返すの面倒なんだよな」
「あぁ、ヨシノの最寄り駅、図書館とは反対方向か」
ヨシノ、と呼ばれたのは綺麗な黒髪の男の子だった。
そんな彼と話しているもう1人の男の子は'ヨシノ'に比べて茶髪寄り。
彼の名前は分からないけれど、茶髪くんが「予約だけしとけば」と'ヨシノ'に言っている。
'ヨシノ'は不服そうに「んー…」と唸った。
そんなにも今すぐ読みたいのだろうか。
私の手元にある本は、'ヨシノ'が読みたがっている本だ。
残る数ページは5分もあれば読み終わる。