熄えないで
ついでだし、図書室を出る前に文庫コーナーを見てから帰ろう。
『消える、』を片手に、文庫が敷き詰められている棚に向かう。
背が高い本棚に囲まれ、ぼんやりと棚を眺めていると、微かに上靴が床を歩く音が聞こえた。
…めずらしい。まだ人がいたのか。
そんなことを思いながら、『消える、』が並べられている棚に向かった。
同じ著者の本で気になるものがあったら借りて帰ろうかな、と、そんな気持ちで反対側の本棚を覗く。
───そこに居た、数少ない貴重な利用者。
「…、吉乃くん、…偶然」
吉乃くん。
知り合って間もないのに、“偶然”が重なる男の子。