熄えないで
◇
「二千花、いる?」
昼休み。
私のクラスに顔をのぞかせた彼の姿に 私は言葉を詰まらせた。
どうして成川くんがここに。
文化祭が終わるまで朝も昼も一緒にいられないって、ついこの間話したばかりだったじゃないか。
それに、食べるにしてもいつも屋上で直接待ち合わせをしていたから、こんな風に教室に迎えに来るのは付き合ってから初めてのことだった。
気まずい気持ちを抑えて駆け寄れば、「なんか顔見るの久々かも」と言われた。
…たしかに。
クラスは離れているし、会う機会が減っていたような気もする。
けれど、自分がそれを気にしないくらいの気持ちでいたのだと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「昼、一緒食べよう」
「えっ、でも成川くん 生徒会の仕事…、」
「二千花とゆっくり話したかったから抜けてきた。今日くらい平気」
優しい笑顔を向けないで欲しい。
同情と呼ばれる感情が大きくなってしまって苦しいの。
成川くんの言葉に小さく頷いて、私はランチバックを持って教室を出た。