熄えないで
そんな気持ちのまま、放課後、私は目的もなく図書室に向かったのだ。
吉乃くんに会えることを期待して、ではない。今日に限っては誰にも会いたくないと本気で思っていた。
本を読む気力はなかった。
図書室の静寂に味方されながら、これから私はどうするべきなのか考えたかった。
けれど、私の小さな願望は、今日も今日とて“偶然”に阻まれてしまった。
その日、いつも私が座っているカウンター席には先客がいた。
どこか見覚えのある黒髪と茶髪。利用者の少ない図書室では、“彼等”の会話は筒抜けだった。
「違う。蒼志、真面目にやって」
「やってるっつうの!」
「真面目にやってる人間は答えに『なんとなく』とか書かないから」
「だってなんとなくそう思ったかもしれないじゃん。小説の中の人の心情を読み取れなんてレベル高すぎ」
「補習になっても俺のせいにしないでね」
「吉乃くん やさしくしておくれ?」